コンヤの博物館

トルコのテキスタイルを歩く(前編)

糸を旅する

トルコの旅(前編)_08

キリムと呼んでいる平織りの敷物

再生を繰り返す絨毯

このように絨毯を扱う人たちは大昔から、価値ある絨毯やキリムを修復し、流通させてきた。時には、まったく別物のように仕上げる術さえ持ちあわせている。それを思うとアンティークの絨毯には、かなり後の手が入っていると考えてよいだろう。

糸を紡ぎ、結んだり織ったりして作られる敷物には自ずと「時間」が埋蔵されているわけで、手間をかけて蘇らせるのは自然なことだが、ときに製作時期が不明瞭にもなる。

私がイランから持ち帰った敷物は、いったいどのように再構成されたものだろうか。時々それに目をやって、謎解きを楽しんでいる。

ここ京都では昨日から小雪が舞っている。久しぶりにイスラム関係の写真や日記を見ていると、鮮やかな色彩と力強い文様に彩られたトルコの日々に舞い戻り、しばらく遠ざかっていて記憶が薄らいでいるいこと、もっと知りたかったことが思い出される。

始まったばかりのトルコの旅をもう少し辿ってみよう。

ひろいのぶこ さん
プロフィール

兵庫県神戸市生まれ。京都市立芸術大学 美術学部 工芸科 卒業後、同大学美術専攻科 染織専攻 修了。長年にわたり母校で教鞭を執り、2017年に名誉教授。繊維を用いた作品を制作しながら、世界各地の染織の現状等を調査・研究し、工芸資料を収集。作品は京都市美術館ほかハンガリー、フランス、アメリカなど海外の美術館にも収蔵されている。

vol.81 2022・春号より