バースからオックスフォードへ、博物館という器の旅

糸を旅する

ルーシー・リーの作品

ルーシー・リーの洗礼された作品の数々

そこに均整の取れたルーシー・リーの器と陶製のボタンが並んでいる。ウィーンの美術学校時代の友人(Fritz Lampl/チェコ出身)が英国に亡命し、大英博物館で古代ギリシャのコインを見たことから始めたガラス製のボタンをビミニ社として作り始めた。

ルーシー・リーのボタン

ルーシー・リーが第二次世界大戦中に手がけた陶製ボタン

戦時中、作陶がままならないリーはこのボタン作りを手伝い、後に陶製ボタンも手がける。これが好評でボタンを量産するスタッフとして雇われたコパーは、作陶をリーから学び共同制作も行う。その後独自の作風を打ち立てていった。

一方バーナード・リーチ(1887~1979)は日本で学び始めた陶芸を、帰国後コーンウォール半島のセント・アイヴスに工房(1922~)をかまえ、生活の器を作った。

思えばこの一時代前にオックスフォード大学を出たウィリアム・モリス(1834~1896)が日常生活の芸術化を目指して「アート&デザイン運動」を展開し、手仕事の土壌を耕したのであった。

そこで次回は産業革命に話がもどることになる。

ひろいのぶこ さん
プロフィール

兵庫県神戸市生まれ。京都市立芸術大学美術学部工芸科卒業後、同大学美術専攻科染織専攻修了。長年にわたり母校で教鞭を執り、2017年に名誉教授。繊維を用いた作品を制作しながら、世界各地の染織の現状等を調査・研究し、工芸資料を収集。作品は京都市美術館ほかハンガリー、フランス、アメリカなど海外の美術館にも収蔵されている。

vol.79 2021・秋号より