宙を彩る自然の色と光と影
Te・ひと・作品個展REPORT
自らひいた極細の絹糸で
透過性のある織り地を仕立てる
取材・文/宿松 道子
写真/寺川 久也
うす紅、さんご、からくれない。さまざまなニュアンスの「紅」を染め分けた絹の織り地が折り重なる。そこに窓からの光、部屋の明かりが反射し、あるいは透過して、さらに多くの色を生む。「花や何」と題する作品は紅の華やぎとこの色が持つ気品、そしてどこか心に添うやさしさも感じさせる。
その目くるめく色に、私は寒風を受けながらあでやかに咲きほこる椿や、百花にさきがけて花ほころばせる梅―気高い冬の花々をイメージした。
この作品の糸は寺川真弓さん自らが草木染をしたもの。しかも糸そのもの、自らひいたものだという。
「繭を煮て、糸をひくのは肉体労働だけど、おもしろいんですよ」彼女はゆったりと目を細めてはほほ笑み、そう語った。