宙を彩る自然の色と光と影

Te・ひと・作品個展REPORT

自らひいた極細の絹糸で
透過性のある織り地を仕立てる

取材・文/宿松 道子
写真/寺川 久也

うす紅、さんご、からくれない。さまざまなニュアンスの「紅」を染め分けた絹の織り地が折り重なる。そこに窓からの光、部屋の明かりが反射し、あるいは透過して、さらに多くの色を生む。「花や何」と題する作品は紅の華やぎとこの色が持つ気品、そしてどこか心に添うやさしさも感じさせる。

その目くるめく色に、私は寒風を受けながらあでやかに咲きほこる椿や、百花にさきがけて花ほころばせる梅―気高い冬の花々をイメージした。

『花や何』Silk Natural dye W90H170 2013年
 東日本大震災を記憶するⅥ
地上にひらく一輪の花の力を念じて

この作品の糸は寺川真弓さん自らが草木染をしたもの。しかも糸そのもの、自らひいたものだという。

「繭を煮て、糸をひくのは肉体労働だけど、おもしろいんですよ」彼女はゆったりと目を細めてはほほ笑み、そう語った。