『おじいちゃんのコート』ジム・エイルズワース 文

テキスタイル文学館

おじいちゃんは大人になったばかりのころ、荷物らしい荷物も持たずたった一人で海を渡り、ヨーロッパからこの新天地へとやって来ました。そしてこの国で彼は仕立てやさんとなり、仕事に精を出します。そんな中で、のちの「おばあちゃん」となる女性と出会い、結婚。その晴れの日に着るためのコートを、おじいちゃんは自らの手で縫い上げました。

結婚式のあとも、コートはおじいちゃんのお気に入り。どこへ行くにも何をするにも着ていたので、やがて擦り切れ、よれよれになってしまいました。するとおじいちゃんはそのコートのきれいなところを生かして、ステキな上着に仕立て直します。その上着も月日が経つと、やがてボロボロに。すると今度はベストに、さらにネクタイに…。かつてのコートはその都度ステキにリメイクされて、長く大切に使われ続けます。

語り手の「わたし」は現在、子を持つ母。つまりおじいちゃんの「ひ孫」も誕生しているわけですから、作り替えられたネクタイも、すでに古くなり…。でも、お話はまだ続いていきます。

モノを大切にすることのすばらしさ、モノを大切にするための知恵と技のすばらしさ。大人が読んでも、そのことが胸に響きます。「もう捨てようかな」と思っていたコートをもう一度手に取りたくなる…。きっとそんな気持ちになるでしょう。