『おちくぼ姫』田辺聖子 著

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おちくぼの姫君は、その美貌ややさしさに加え、裁縫にも長けているとあって、すてきな貴公子の心をつかんだのでした。この2人を取り持つカギとなったのは、姫に仕える女房・阿漕(あこぎ)やその夫。人の絆が、カボチャを馬車に変える魔法の役割をも担ったのです。

「落窪物語」が描かれたのは、千年以上も昔のこと。だから結婚の形態ひとつをとっても、「通い婚」から始まる当時と、現代のそれとでは違いがあって、原文だけでは理解しづらいところもあります。そうした習慣について筆者が解説を加え、少年少女でもわかりやすく読めるよう現代文に訳したのが、この「おちくぼ姫」。

歯切れよく、随所にユーモアも込めた“お聖さん節”。ぜひ楽しんでみてください。

この記事でご紹介した本
『おちくぼ姫』田辺聖子 著
角川文庫 第一刷:1990年

◆著書プロフィールSeiko Tanabe
【1928~2019】大阪生まれ。1956年、「虹」で大阪市民文芸賞を受け、本格的に作家活動を開始する。’64年「感傷旅行」で第50回芥川賞、’87年「花衣ぬぐやまつわる…」で女流文学賞、’93年「ひねくれ一茶」で吉川英治文学賞を受賞。2008年、文化勲章受章。幼少期から親しんだ古典文学の現代語訳、古典文学に関する随筆作品も多い。

vol.82 2022・夏号より