さて気になるタイトル「毛糸よさらば」（原題「A Farewell to Yarns」）。これはヘミングウェーの「武器よさらば」（「A Farewell to Arms」のパロディーです。「エンドウと平和」（「戦争と平和」）、「ゴミと罰」（「罪と罰」）、「豚たちの沈黙」（「羊たちの沈黙」）など、同シリーズの他作品にも、文学・映画の名作をもじったタイトルが付けられていて、〝オトナ〟な遊びごころが感じられます。

この記事でご紹介した本『毛糸よさらば』原題「A Farewell to Yarns」ジル・チャーチル著　浅羽英子訳　創元推理文庫

◆著書プロフィール
Jill Churchill【1943～】アメリカ・カンザス州生まれ。本名のジャニス・ヤング・ブルックス名義で歴史小説やノンフィクションで作家デビュー。´89年、主婦探偵ジェーンシリーズ第１作「ゴミと罰」をジル・チャーチル名義で発表し、アガサ賞最優秀処女長編賞などを受賞。同シリーズで人気ミステリー作家の仲間入りをする。

vol.79　2021・秋号より