『水を縫う』寺地はるな 著

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本作は、清澄をはじめ主要人物の「語り」のかたちで進み、それぞれの人生、それぞれの目線から見た家族の像、さらにそれぞれの内面も丁寧につづられます。

男らしさ・女らしさ、あるいは母親らしさ・父親らしさ…。多様性の尊重が叫ばれる現代ですが、実社会では従来の価値観を押し付けられ、窮屈さや違和感を抱くこともあります。そのなかで〝自分〟を守りつつ、心の間口を少し広げて相手を思いやる家族。〝等身大〟の人びとのリアルな思いが、さわやかな感動を呼びます。

この記事でご紹介した本
『水を縫う』寺地はるな 著
集英社 初版発行:2010年

◆著書プロフィール寺地はるな
【1977~】佐賀県生まれ。大阪府在住。会社勤めと主婦業の傍ら35歳から小説を書き始める。’14「ビオレタ」でポプラ社小説新人賞を受賞、’20年、「夜が暗いとは限らない」が山本周五郎賞候補となる。同年に刊行された「水を縫う」は河合隼雄物語賞を受賞、21年の入試問題にも数多く取り上げられ、話題を呼んだ。

vol.80 2021・冬号より