知っておきたい「紡毛糸」のこと 2
糸と手しごとファイル
「ミュール精紡」と「リング精紡」
◆ミュールの“母”は かの「ジェニー」
糸に撚りをかけながら引き伸ばしていく「ミュール」精紡。この方式は産業革命真っただ中の18世紀後に発明され、現在でも活用されています。比較的細い糸を紡ぐのに適した方法で、メリヤス糸(ニット用の糸)や細番手の織り糸などもミュール精紡で作られています。なお、ておりや定番の紡毛糸も、ミュール精紡によって作られた糸が中心です。
ちなみに「ミュール」というのは「ラバ」(ロバと馬をかけ合わせた家畜)を指す言葉。そのころすでに使われていた2種類の紡績機の良いところを取り入れて誕生したので、この名前が付けられたようです。
そのミュールのもとになった紡績機の1つが、「ジェニー紡績機」。おなじみスウェーデンの「オステルヨートランド羊毛紡績」社は、今もジェニーを使って紡績を続けています。
◆効率の良いリング精紡
リング精紡は、太番手に適した精紡機で、カーペットや毛布などを製造する工業用の糸や綿紡にも使用されています。この方式はミュールの発明から遅れること約半世紀、アメリカで誕生し、生産効率の良さから世界に広がりました。日本でも19世紀の終わりにはミュールの紡錘数を上回り、20世紀前半にはリング精紡が大半を占めるようになりました。
『知っておきたい「紡毛糸」のこと 3』では紡毛紡績の工程をさらにわかりやすく表にしました。
vol.65 2018・春号より