寺川真弓さんの作品

寺川真弓 織展

Te・ひと・作品個展REPORT特集

お蚕さんや
草木がもたらす
自然の美を生かす

春の風が舞い始めた3月上旬。大阪市福島区にあるレトロビルにあるギャラリーを訪ねると、扉の中にも春色の景色が広がっていました。日本古来の蚕の品種「小石丸」の極細の糸で織られた、霞のかかった野辺を思わせる薄い絹。琉球藍やフクギなど草木の染め色も、華やかな中にも穏やかさがあり、春のイメージそのものです。暗い冬を過ぎ、春の訪れに触れた喜びを織り作品として具現しているようにも思えます。

2013年に本誌の取材に協力してもらって以来、寺川さんとは8年ぶりの再会。当時は奈良県下の住宅街にお住まいでしたが、その後、自分で繭を育てることから始めたいという思いが大きくなって、それが可能な場所を求め、生駒山腹に転居したそうです。 畑の土を耕し、桑を植える。そして「お蚕(かいこ)さん」を卵から育て、その繭からひいた糸を、自ら育て、採集した草木などで染める―。織機に向かい、手織りを始めるまでにこれだけの手間や時間がかかります。そのことが作品にも表れているのでしょうか。透けるほど薄くはかなげな布であっても、濃密。確固とした存在感があります。