寺川真弓 織展
Te・ひと・作品個展REPORT特集
「お蚕さん」。寺川さんは蚕のことを、慈しみと敬いをもってそう呼びます。「自分でお蚕さんを育てるようになって、素材をムダにしたくない、生かし切りたいという気持ちが大きくなりました」
彼女が育てる小石丸は、皇后さまも飼育されていることで知られる日本古来の品種。繭は小ぶりで取れる糸の量も少ないため、生産性が求められる近代以降、飼育数は減少してしまいました。しかし糸の質が良く、太さは一般的な絹糸が3デニールほどなのに対し、小石丸は1・7デニール程度。その〝細さ〟は、地球の重力を感じさせない浮遊感のある作品として、しっかり生かされています。
小石丸とは趣の異なる、きらびやかな光沢のある織は、野蚕糸を用いたもの。野蚕は強い光沢を持つ素材ですが、座繰りで糸をとると光が乱反射しやすい構造になり、よりキラキラと輝きを増すそうです。もちろんその座繰りも彼女自身が行っています。