河原林美知子さん作品展「Identity」
Te・ひと・作品個展REPORT特集
日記をつづるように
縫い重ねられた「Identity」
ファイバーアーティスととして、国内はもとより海外でも高い評価を受ける河原林美知子さん。2022年の彼女は、1月8日から催された15日間にわたる個展から活動をスタートさせました。
会場は京都の「GalleryGallery」。今回はその作品を鑑賞、さらに河原林さんにもお話を伺い、10年ぶりとなる本誌へのご登場をお願いしました。
ギャラリーの入り口を入ると、高い天井近くから無数にしたたり落ちる、白い帯の芯地が大きなマッスとなって空間を支配していました。 その一つひとつには、破線のステッチ、円、テンションのかかった糸の直線、あるいは糸のたゆみがフリーハンドで描いたかのような曲線などが見られました。さらに、糸と生地の力関係で生じるじゃばら状のヒダ、自然に生じるねじれ…。手仕事が、真っ白な布にさまざまな表情とリズムを与えています。
「〝こういう感じのものを作る〟というイメージなしに、自由に、日記をつけるような感覚で、毎日針を動かしてきました」
河原林さんは飄々と語りますが、これだけの大作、制作期間はおよそ1年に及んだと言います。今回の作品のテーマは「Identity」(アイデンティティー)。以前、生命のエネルギーを蓄えた「Seed」(種)を一つのテーマとして創作していた河原林さん。そこからさらに生命の根源を標榜し、自分らしさを示す「アイデンティティー」の表現に取り組んだのです。