トルコのテキスタイルを歩く(前編)
糸を旅する
まっすぐ絨毯商のもとへ
イスタンブール空港には早朝に到着しすぐに国内線のチケットを買い、知人に紹介された絨毯工房の主を訪ねてトルコ中部の古都コンヤへ向かう。空港に迎えに来てくれた初対面のメフメットさんの車に荷物を積み込んで、さっそく市内の自宅へ。3階建ての1階に我々の部屋が用意されており、風が通って涼しい。キッチンから見えるテラスには、絨毯と並んでトマトやプラムが干してある。
遅い朝食をすませると、娘のビルジさんの案内でカラタイ博物館、インジェミナーレ博物館、スルチャル博物館を見て回る。こうしてトルコ中部におけるイスラム美術のエッセンスを、急ぎ身体に注ぎ込む。2002年のイランで経験したイスラム美の熱も思い出されて、これからの3週間に期待がふくらむ。
街には晩夏の光があふれている。大学生のビルジさんはジーンズに野球帽だが、この街の女性たちはたいてい髪をスカーフ(エシャルプまたはヒジャブ)で包んでいる。歩いていると、ベビーカーの赤ん坊に薄布が掛けられているのが目に入った。それは陽射しを避けるためのスカーフで、縁に小花のレースが施されている。これはイーネ・オヤと呼ぶ伝統的な装飾で、女性たちの繊細な針仕事はまだまだ健在のようだ。これについてはあらためて述べたい。