宙を彩る自然の色と光と影

Te・ひと・作品個展REPORT

寺川さんは奈良市に住む染色作家。以前は既成の細い糸を使って織っていたが、2年前の東日本大震災をきっかけに、群馬で座繰りを学び、絹糸作りから始めるようになったそうだ。

高温乾燥させた乾繭は、縮れのある糸に。それよりも自然に近い状態の生繭であれば、繊維がしなやかに伸び、乾繭でとった糸とはまた違ったなめらかな風合いの糸になる。

彼女は「機械でひく画一的な糸ではなく、もっと表情を出したいから」と、玉繭もまぜて糸をとっている。その糸は、「もともと細い糸が好きで、学生時代、着物の織りの勉強をしていたころは透明感のある織物、絽や紗に惹かれました」という自身の求める“細さ”。

『死がおまえの戸口を叩く日に』
Silk Nature dye W225xH150 2008年

玉繭から引き出された繊維は10~20デニール。室内のわずかな空気の動きにもふわりと舞い、しっかり凝視していなければ見失ってしまう微細なものだ。

繭は自然の産物。それを染めるにも植物などの自然の染料を使う。“自然”を相手に創作するのだから、自分の想像していたものと違う結果になることも多い。

でも「思いどおりでなくてもいい、むしろこの方がよかったといつも思えるんです」

『死がおまえの戸口を叩く日に』
Silk Nature dye W225xH150 2008年