宙を彩る自然の色と光と影
Te・ひと・作品個展REPORT
「宙はわれらの弱さを助けたもう」
「怒りの日、されどわれらは」
寺川さんの作品は、人間や社会に向けて発する問いかけや哲学をテーマとしている。大きなテーマ性を込めた大作は重厚ながら、決して硬質・高圧的な表現ではなく、ひとを包み込むような穏やかさがある。薄く、柔らかな織りの特性が、その効果につながっている。さらに色濃く強く“日本”のイメージが存在するのも個性だ。
紅、黄、藍。この国にはいにしえより鮮やかな色の世界があった。そしてその背景には、土の色、木肌の色、刻々と変わる空、もやをまとった月影―特有の空気や光や季節の風情がまざりあった柔和な色、わびた色が広がっている。
彼女の育った環境にはそうした“日本の色”があった。「実家は奈良県下の田原本という町にあり、絵馬や土鈴を作って神社や寺に納める仕事をしていました」。