宙を彩る自然の色と光と影

Te・ひと・作品個展REPORT

『戦火の記憶』
Silk Naturarl dye W235xH260 2000年

糸を作り、ひたすらに織り、一つの作品を完成させたとき、素材の一つひとつが何ものであるかがわかり、その存在の意味を知ることができる。

「だから緯糸を通すときは、わくわく」。そして織り上げたものを手にすると「ご褒美をもらったような気がします。」

伝統の継承のための手仕事ではなく、「伝統と現代のパイプ役」となること。彼女自身はそう望み、事実、織りを空間に配置することでいまの世に問う斬新なインスタレーションとなる表現をすでに自分のものにしている。

伝統は決して古めいたものではない。その時代に“在るべき表現者”が出現することによって生き続けるもの。彼女の作品はそんなことを教えてくれる。

寺川真弓さん
寺川真弓さん
プロフィール

奈良県に生まれる。1987年、京都教育大学教育学部特修美術科卒業。在学中に川島テキスタイルスクールでも学ぶ。着物会社・テキスタイルメーカー勤務を経て、作家活動を開始。1996年、全日本新人染織展への出品を皮切りに、’97年奈良県美術展覧会、’98年日本伝統工芸近畿展、2000年京展などに出品。’06年ワコール銀座アートスペース(東京)、’08年ギャラリーマロニエ(京都)’13年ギャラリーけやき(兵庫)など、個展・グループ展多数。今年8月には京都教育大学工芸専攻卒業生有志による「一匠会展」に参加。

寺川さんのHP  terakawa.la.coocan.jp

vol.77 2021・春号より