知っておきたい「紡毛糸」のこと 1

糸と手しごとファイル

繊維とともに“空気”も紡ぐ紡毛糸

紡毛紡績(ウーレン)に用いる繊維は、平均の長さは2インチ(5.08センチ)程度が最適。紡ぐ糸の番手にもよりますが、長さ4インチ(10.16センチ)以上の原毛を紡ぐのは難しくなるようです。

紡毛紡績の原理は、短い繊維が絡み合った綿状の「篠(しの)」から繊維を引き出し、撚りをかけて1本の糸にしていく、というもの。繊維の平行度は小さく、折れ曲がったままの毛も多く含まれているので、糸の中には多くの隙間があって空気がたっぷり含まれます。

同じような太さでも、繊維が締まった状態の梳毛糸に比べると軽くなり、「これぞ毛糸!」というふんわり感の糸ができます。

また、紡績工程で落ちた短毛(ノイル)や反毛品(糸を分解して再生させた繊維)、繊維の短いアニマルヘアなどの混毛も可能。多様な糸・表情豊かな糸ができるのも、紡毛紡績のメリットです。

紡毛糸だからできるテクニック

短い繊維を紡いだ紡毛糸。織りやニットには、この糸ならではの個性を生かしたテクニックがあります。その1つが「起毛」。織り地・編み地の表面をチーゼルなどを使って起毛させるのには、繊維が短く毛羽立ちやすい紡毛糸が適しています。

また〝羊の島〟フェア島で伝えられてきた「フェアアイルニット」には、編み地に「切りしろ」を作ってハサミを入れる「スティーク」という技法があります。これも、紡毛糸ならではの繊維の“絡み”を生かしたテクニックです。