知っておきたい「紡毛糸」のこと 4

糸と手しごとファイル

糸の品質を保つ“日本の仕事”

紡毛糸 カシミヤ
カシミヤ 26番3本撚り 素材:カシミヤ100%

ておりや定番の紡毛糸は、すべて国内で紡績しています。糸作りに活用される技術や機材は、諸外国もほぼ同じですが、やはり日本の職人さんたちの仕事はこまやか。そして何かしらの課題に対して「できないこと」を削っていくのではなく、「できる工夫」を加えていくという姿勢を見せてくれます。

そうした「こだわり」にも支えられながら、糸の品質を保つことに努めています。

糸の色も作品のイメージを左右する大切な要素となるため、染色も国内で行っています。

製造工程では糸に油が付いたまま。それを洗い流す「ソーピング」の作業も染工所で行います。染料を使うか使わないかの違いだけで、染色を2回繰り返すような手間がかかりますが、糸を商品として提供する前には必ず行わなければなりません。

そして、きれいに洗い上げた糸はスチームをかけて、ふんわり…。これでようやく店頭に並べられる糸としての身支度が整います。

春夏にも取り入れたいウールの魅力

ウールは「秋冬向け」というイメージが強いですが、実は春や夏の暮らしにも取り入れたい性質を持った素材でもあります。

「温かい」という特徴は、「熱伝導率の低さ」によるもの。ウールは熱の伝わりにくい「空気」をたっぷり含んでいるので、外気温の影響を受けづらく、ウールの断熱材も作られているほど。夏の暑さを遮るのにも工夫次第で生かせそうです。

またまるで息をするようにスムーズに、水分を吸ったり放出したりするのもウールの特性です。しかも表面の撥水性が高く、サラッと心地よい感触が保てます。このことから、スーツや靴下など夏向きアイテムも多く製品化、近ごろはスポーツウェアの素材としても用いられています。

公定水分率(繊維が含むことができる水分)の比較

紡毛糸 公定水分率の比較

クーラー対策のために涼しげなデザインの肩掛け・ひざ掛けを編んでみたり、吸水性の高さを生かしてボトルケースやコースターを作ってみたり…。これからの季節もぜひウールの良さを生かして、暮らしと創作を楽しんでください。

vol.65 2018・春号より