河原林美知子さん作品展「Identity」
Te・ひと・作品個展REPORT特集
伝統産業の衰退は寂しいことです。しかし河原林さんにバトンが渡されたことで、残された芯地が作品としてひとの心に残るものとして昇華し、素材としての役を全うしようとしている…。そこに立ち会えたことにも感慨を覚えました。
さらに日記をつづるように針仕事をするなかで、彼女が思いを巡らせたのは、女性の手仕事の伝統。
「女性は昔から家のこともしながら、こんなふうに自分の時間に手を動かしていたんだなあと。いまは忘れがちになっているけれど、その手仕事の伝統をつないで、永遠に受け継いでいってほしいって思います」
「この個展の会期中に、私は80歳を迎えました。だからこれは79歳に作った、70代最後の作品になります」
圧倒的な作品の前では、年齢のことなど吹き飛んでしまいました。
また、今後してみたいことを尋ねると「若いころからなじみ、身につけた技は、年を重ねても体が覚えているもの。だから高齢者施設などで針仕事をしていただく…。私にもそんなお手伝いができるんじゃないかしら、と」。
そうした新たなビジョンも含め、これからの彼女の活動・活躍も、楽しみでしかありません。