技法もとりどりのオヤ

トルコのテキスタイルを歩く(後編)

糸を旅する

技法も色もとりどりのオヤ

技法も色もとりどりのオヤ

女性の髪を布で覆うイスラムの教え

政教分離という建前でも、年輩女性や地方ではイスラムの教えどおり布(トルコでは数種の名称がある)で髪を覆う。しかしこの時は、オヤ付きのスカーフをイスタンブールで私は見ることはなかった。この愛らしいオヤは消えてしまったのだろうか。

少し古いスカーフ地は素朴な木版プリントの綿ガーゼで、「トゥルベント」と言う。正方形の布の四辺や裁断した二辺の縁をかがりながら、同じ糸で装飾を施す。手引きの絹や木綿糸、まれに羊毛も使う。イーネオヤ技法の源が漁網にあるといわれているのは一目ずつ結ぶからなのだろう。

オヤは繊細な装飾と思われがちだが、ブルサの博物館に並んでいたのは「エフェオヤ」という若い兵士の頭部を飾る、大きく立体的な花々だった。親しい女性が彼の安全を願って作ったものだという。