『掌の小説』より「小切」川端康成 著

テキスタイル文学館

文豪の精華を知らしめる“大いなる小品”
短編よりもさらに短い小説を
「掌編小説」と呼ぶことがあります。
掌に納まりそうな、まさに『掌の小説』。
川端康成による掌作品集、そこに収録された122編の中から「小切」という作品をご紹介します。

掌の小説より小切

『掌の小説』新潮文庫 初版発行:1971年

物語の背景は戦時中。主人公の「美也子」は関西から関東に移り住んだ一家の娘。だから、衣替えをしていて見つけた、箪笥(たんす)の底に眠る母手製の襦袢(じゅばん)も、袖口の裏を少し持ち出して縫い上げる、いわゆる関西風の仕立てでした(毛抜き合わせで縫うのが関東風とされます)。