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2025/04/15
ておりや通信【te】の誌面で、テキスタイル関連のニュースを紹介する「ニュースくりっぷ」も、ておりやブログ内にお引っ越し。
繊維業界の動きやトレンド、注目の新素材など、気になる話題をお届けしていきます。
今回はCO2を原料とした、地球にやさしいポリエステルについて紹介します。
軽くてシワになりにくく、丈夫で汚れにくい…。そんな、多くのメリットを持つポリエステル。合成繊維の中では最も生産量が多く、広く普及しているので、きっと多くの方のワードローブの中でも、ポリエステルのシャツやスカートなどが見つけられるのではないでしょうか。
素材の特性を生かし、スポーツウェアやレインコートに。冬はフリース、夏は接触冷感グッズ、またカーテン、ラグ、ソファの張地などインテリアにも多く使われていて、一年中暮らしのなかで活躍している素材です。
ご存じのように、ポリエステルはおもに石油由来の原料を使用した合成繊維です。
この素材は先に述べたように、さまざまなメリットがある半面、生産に大きなエネルギーを必要とし、多量の二酸化炭素(CO2)も発生させます。
使い終わったポリエステルを焼却するとそこでもCO2が発生、地中に埋めても自然に還るまで200年かかるともいわれています。
こうした問題を解決するために、サトウキビなどを原料とする植物由来のポリエステル、あるいはペットボトルを再利用したリサイクルポリエステルもつくられるようになりました。
そしていま、もう一歩進んで、工場や発電所などから発生するCO2からポリエステルをつくる技術の開発研究が進められています。
日本では2023年、富山大学と民間企業がタッグを組み、CO2由来のポリエステル原料(PX)の合成に成功。それを用いたウエアもすでに商品化されています。
記憶に新しいパリ五輪(2024年開催)のスポーツクライミングでは、その繊維を用いたユニフォームを着用した日本選手がメダルを獲得しました。
政府は2020年、その先の30年以内に、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目ざすことを宣言しました。
そのための対策としては、石油やガスの利用量の抑制、再生可能エネルギーの利用、植林などがあり、自治体や企業、それに一般の生活者たちの多くも行動を始めています。
CO2を活用するポリエステルの開発研究も、その動きと同じ方向にあるものです。
ただし、いまのところCO2由来のポリエステルの利用は限られたもの。暮らしのあれこれに活用できるよう量産体制を確立するには、もうしばらく時間が必要なようです。
もちろん本格的な工業生産を可能にするための研究は進められていて、今年(2025年)2月には大阪大学などが触媒技術を用いてPXの合成に成功したというニュースも報じられました。
目には見えないけれど、大気圏全体に広がって地球を温暖化しているCO2。
それを原料として生かせるのであれば、ポリエステルは環境負荷の大きな素材から、地球にやさしい素材へと進化します。
近い将来、そのフェーズが訪れようとしています。