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赤穂緞通 受け継がれてきた技

つくること

2025/05/02

 

ひとりの女性が生み出した敷物

「ておりや通信te」vol88にて工房訪問の記事を掲載しました。その続編として赤穂緞通(あこうだんつう)の技についてお伝えします。

赤穂緞通は江戸末期、児島なかという1人の女性が四国・高松で出会った中国の絨毯「万暦氈(ばんれきせん)」に感動したところから始まります。それから26年間にわたり研究と試行錯誤を重ね明治7年(1874)に完成した敷物が今に繋がっています。

この26年という月日はどのような日々だったのでしょう。家事や子育てという日々の暮らしの中で情報も少ない時代に手探りの状況は落胆と喜びが交じり合う濃密な時間だったのではないでしょうか。

逸話として炬燵(こたつ)の櫓(やぐら)を織機に見立てたという話が残っているそうです。作りたいという思いを形にした児島なかの芯の強さと人間力を感じずにはいられません。

 

写真提供・作成協力:

赤穂緞通 工房 「結」 主宰 見並なおこさん
【Instagram】 @ akodantsu_yuu

赤穂段通 六月 主宰 阪上梨恵さん
【Instagram】 @ akodantsu_mutsuki
【HP】 https://www.akodantsu-mutsuki.com/

参考文献 :
『赤穂段通 AKO Dantsu Rugs』
発行 「赤穂緞通 六月」阪上梨恵 著

取材:園 知佐子(ておりや東京スタッフ)

 

 

赤穂緞通の文様

 

文様は中国、インド、ペルシャなど世界の絨毯や日本の宝物の錦を模したことによりバリエーションに富んだ緞通が多くみられるのも魅力のひとつになっています。緞通の縁に織られる龍の文様は中国の青銅器から図案化されたという面白いものもあります。

 

赤穂緞通は主に国内で流通しました。中でも京都で愛され、京都の図案師によって作られたのではないかと思われる文様もあります。

今でも大切にされてきた古緞通を祇園祭の屏風祭にて見ることができます。

 

赤穂緞通工程図

独自に編み出された赤穂緞通の技は、三方を山に囲まれた陸の孤島のような赤穂の土地だからこそ生まれ、守られてきたものと言えるかもしれません。

知れば知るほどに魅力溢れる赤穂緞通、これより織の工程について写真、動画と共に解説していきます。細かい工程は下記の赤穂緞通製法工程図をご覧ください。

 

 

赤穂緞通の特性と技

 

1枚の緞通の大きさは畳の京間一畳の大きさ約95cm×191cmを基本としています。

木綿の糸を使用するのは日本の高温多湿な気候に合い江戸末期頃に入手しやすかったため。

赤穂緞通の機は堅機(たてばた)でなくオリジナルの水平機。鍋島緞通(佐賀県)、堺緞通(大阪府)の織機は異なりますが堅機です。

 

◆水平機 赤穂緞通
床に対して経糸(たていと)を水平に張り緯(よこ)糸(いと)を通して織ります。

◆竪機(たてばた)(垂直機) 鍋島緞通、堺緞通
床に対して経糸を垂直に張り緯糸を通して織ります。主に絨毯や敷物を織るのに使用。

 

①糸の糊付け

経糸は糊を揉み込みへ台という整経台に糸を巻きつけ乾燥させ、緯糸はしっかり固定するため糊付け後、湿った状態で打ち込みます。

糊を糸に揉み込むことにより織の強化と織り上がった後に形を整えることが出来ます。

 

②糸はせ

 

 

毛足となるパイル糸は、はせ糸と呼び経糸にペルシャ結び(右開き)で柄を出していきます。
ペルシャ結びは1㎠に約4目入ります。
はせ糸と緯糸を入れる段数は1㎝に約2段になります。
パイルの長さは1.5cmほどに。

 

③耳糸を巻く

段を進める時に両端に張った太い糸に糸を巻きつけて本体に固定する工程。緞通の端を強化するために欠かせません。この時使う杼は漁網用の網針の形をしています。瀬戸内海の海が広がる赤穂、身近にあったものを使用したと考えられます。

 

④「筋摘み」「地摘み」「仕上げ摘み」

 

 

織りの工程で「摘み」という技があります。摘みには「筋摘み」「地摘み」「仕上げ摘み」とあり鋏(はさみ)の根元に角度がついた腰折れ鋏を用いパイル糸の毛先を整えます。この中でも赤穂緞通の最大の特徴である「筋摘み」は文様の境目をカット、溝をつけ立体的に仕上げます。この文様の立体感が赤穂緞通ならではの風合いをだしています。

 

⑤織り上がり 仕上げと敷伸し

 

 

織り上がると経糸を結び、最後の工程である敷伸しという工程に。緞通を板に釘で張り付け裏から水を打ち糊を流します。形を整え天日干します。

 

 

伝統の技に触れる

特徴ある工程をお伝えしましたが、これ程まで丁寧に仕上げられる赤穂緞通は手慣れた織り手でも年間に2枚ほどしか織ることが出来ないといいます。

明治に完成されたこの技法は現在約30名の織り手に受け継がれています。その昔塩の町であった赤穂、塩田で働き家事も担う女性たちは空いた時間に緞通をも織ったそうです。

 

海が見る塩田に緞通を織る音が響く、そんな風景に想いを馳せ赤穂緞通に触れる旅に出るのも良いかもしれません。

 

 

◎赤穂緞通の工房にて見学や織り体験も出来ます。 赤穂市役所のホームページより赤穂雲火焼き&赤穂緞通工房ガイドのPDFファイルが入手できます。赤穂は温泉もあり観光としても楽しめます。

 

 

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