糸と織機のお店
ておりやブログ

 

島の緑、草木の色を感じる展覧会
～色波～ironami 鑑賞レポート

 

“瑠璃の森”－濃く深い青の宝石、藍の色、そして森の色を連想します。シーズンテーマであるこの言葉には、Veriteco（ヴェリテコ・浅田美樹雄、真理子夫妻のユニット）のお二人が暮らす日常の景色を届けたいという思いが込められています。そして畑で育てた藍から染める自分たちの藍染めの魅力を伝えたいという思いも。
Veriteco：https://veriteco.com/　
instagram:@veriteco

 

 

展覧会場には彼らが暮らす瀬戸内海 香川県 豊島（てしま）のセイヨウキズタなど、生活の身近にある木々が持ち込まれ、居心地の良い空間に演出されていました。また１コーナーには、真理子さんと相談しながら草木染めの糸や布で作られた植物のパーツを組み合わせて好みのアクセサリーを仕立てる小さなアトリエも開設されていて、島での制作の空気感も楽しめます。

 

 

生活の拠点を豊島へ

 

浅田さん夫妻には「いつか畑をして植物や野菜を作りたい」という思いがあり、休みが取れると日本各地を巡り自分たちに合う場所を探していたそう。そのとき、瀬戸内海の豊島で見つけた家は立地が良く、畑にできそうな土地も隣接していたことから2015年、東京からの移住を決断しました。島暮らしと旅をしながら各都市を訪れて作品を披露する日々は、とてもバランスが良く、心地良いものとなっているようです。

 

「私たちが作ったものを身に着けて喜んでいただける。展覧会に足を運び、会いに来てくださるお客さまがいることが、もの作りの活力になっています。」制作に集中できる島暮らしと、各地で得られる情報や刺激。それらの相乗効果が作品に結集しています。

 

 

美しい草木染めの花々、色をまとう喜び

 

草木染めでアクセサリーを制作することになったきっかけは、真理子さんがフランス手芸材料店に勤めていたことが大きく影響しています。「フランス造花の日焼けしたような色合いがたまらなく好きだった」という真理子さん。いろんな造花があるものの、草木染めで作られたものはなく、「ないのなら自分でやってみようとなって。紅茶や玉ねぎの皮での染めからスタートしたんです。」身近な花や実のモチーフは繊細で美しく、温かさを感じさせるもの。そのベースには、植物への観察眼とデザイン力があると感じます。

 

 

Veritecoもう１つの魅力

 

Veritecoのもう１つの魅力は、草木染めの洋服。そのすべてが、アパレル企業で25年パタンナーとして活躍してきた経歴をもつ夫の美樹雄さんが手がけるオリジナルのパターンを用いたもので、縫製後に染められます。藍のほか、島で採れる栗、桜、黄花秋桜などを染料に、何度も繰り返して染色。あえて染めムラを残すのは着用していたような柔らかな”こなれ感”を出すため。「島暮らしでもファッションからは離れられない」「洋服が好き。だから大切にしたい」という気持ちが伝わります。

 

美樹雄さんは「作る洋服はアクセサリーに寄り添うためのものなんです」とも。お互いの作品が支え合う、お2人の関係性もとてもステキに感じました。

 

Veritecoプロフィール

 

2007年4月、Veritecoの活動をスタート。東京の西荻窪、月島でアトリエショップを運営。’15年に香川県の豊島に夫婦で移住、活動の拠点とする。自然豊かな島での生活から草木染めのアクセサリー、洋服を制作。著書にグラフィック社刊の「ハーブで染める花々のコサージュ」「Veritecoの刺繍図鑑」がある。
Veriteco：https://veriteco.com/　
instagram:@veriteco

 

ておりや通信『te』vol.87
鑑賞レポート〈拡大版〉より
写真協力：Veriteco
取材：園 知佐子（ておりや東京スタッフ）