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2025/12/24

2025年も残すところわずかとなりました。
慌ただしいなかではありますが、ウールを使っての手仕事が楽しい時季でもありますね。
2020年代は早くも半ばを過ぎ、年が明ければ2026年。
この時代、そしてその先、ウールという素材はどんな存在になっていくのでしょう。
今回は「2020年代のウール事情」の後編として、ウールを取り巻く今後の動向に注目してみました。

2029年に向けて、世界のウール市場は年平均成長率(CAGR)3.2%で成長する―。
そんな市場予想レポートに出会いました。
レポートの提供者は、さまざまな業界の市場動向の分析やコンサルティングを手掛けるグローバル企業です。
さらに別会社の分析データを見ると、日本のウール市場も2035年まで世界平均を超える4.1%のCAGRで推移するとも。
前回紹介したような、オーストラリア・ニュージーランドなどウール大国の羊の飼育現場の状況。
続々と開発される新素材。さらには長引く夏の暑さから二季化しつつある日本…。
そんなことから、ウール市場が拡大するというのは少し意外な気がしました。
「なぜウール市場が拡大するの?」
その疑問を解くため、より広い資料から、拡大予想の裏付けとなる要因や需要アップに対応する動きを探していくことにしましょう。

ウール市場拡大の主な要因は、何といっても保温・調湿性、耐久性、難燃性などに優れた繊維素材であること。
経済発展を続ける国々でも「本物志向」が高まり、ウール需要はすでに拡大傾向にあるようです。
それと同時に、ウールは環境負荷が少ない自然素材であることも見逃せません。
ウールは地中・海中で微生物によって100%分解されます。
SDGsの意識の高まりのなか、生分解性の高さも、ウール需要拡大につながっているのです。

需要拡大が見込まれるなか、牧羊の現場では新しいテクノロジーを活用することで効率化を図り、人手不足・後継者不足等の問題解決につなげる「スマート畜産」の動きが徐々に広がっているようです。
例えば、電子タグなどを用いて羊の健康状態を把握したり、牧場の上にドローンを飛ばして牧草を撮影し、草の生育状況をAI判定したり。
人類が羊を飼い始めたのは約1万年前ともいわれます。
羊を飼うこと。その毛を利用し、暮らしに役立て、暮らしを楽しむということは歴史ある文化といえるでしょう。
それを守り、後世へとつなぎために、新技術が役立てられ始めているのです。

この時代、見過ごせないのが「畜産と地球環境」の関係です。
かねてより、牛や羊が排出するメタンガス(げっぷ)が地球温暖化の一因になっていることが取り沙汰されてきました。
その対策としていま、注目されているのが「カギケノリ」という海藻。
カギケノリを餌にまぜることで、羊の腸内メタンを抑えることができるというのです。
カギケノリは日本を含む太平洋に広く分布しますが、天然資源は有限。
そのため養殖の実験が進められています。
さらにこのカギケノリと同様の機能は、健康食品として利用されている微細藻類「ユーグレナ」にもあるとか。
水中生物の自然の力で、地球と大気を守る…。
そんな未来も近づいてきているようです。