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「クラフトキャンプ」に参加しました(前編)―林ことみのハンドメイドNavi

『te(て)』記事より

2024/08/06

インレイのピンクッション

 

『Craft Camp』とは

 

クラフトキャンプは2014年から始まり、2020年と2021年は開催されませんでしたので今年(2023年)で8回目となります。

 

主催はタルトゥ大学のヴィリャンディにあるカルチャーアカデミーです。目的はエストニアの伝統的な手工芸の技術を説明することによってエストニアの手工芸品を紹介し、それらの技術の現代的な使い方を学ぶことですが、もう1つの目的は骨細工、金工やかぎ針編み、ボビンレースなどの自国の工芸の研究をすることでした。

 

ニット、刺繍、ソーイングなどの分野で活躍する手芸ジャーナリスト 林ことみさんによる「2023年夏 クラフトキャンプ」のレポートを前編、後編にわけてご紹介します。

 

さまざまな国からヴィリャンディに集合

 

エストニア地図

 

やっと渡航規制が緩和され、マスクもPCRの検査結果も必要がなくなった2023年夏。エストニアの「クラフトキャンプ」に参加してきました。

 

クラフトキャンプは今年で8回目の開催。私には2019年に初めて連絡が届いて、このイベントのことを知りました(何故メールが届いたかは不明)2020年に参加予定だったにもかかわらず、コロナで開催中止。続く’21年も中止でしたが、去年から再開。しかし残念ながら昨年は参加できなかったので、「今年こそは」と出かけました

 

イベントの主催はタルトゥ大学(エストニア第2の都市・タルトゥに本部を置く国立大学)付属のアカデミーで2018年に今回の会場と同じくヴィリャンティという町で行われた「ノルディックニッティングシンポジウム」を取り仕切っていた女性が、今回も中心になっていたようです。

 

2日間のワークショップ1クラスと、1日のワークショップ2クラスを申し込みました。初日は受付とオープニングディナーのみ。でかける3週間ほど前に私が取りたかったワークショップが第一希望も第二希望も、希望者が他にいなかったので、「木彫りスプーン」のクラスに変更して欲しいと連絡があり、そのつもりで出かけました。

 

クラフトキャンプ

 

参加者は39名でしたが、さまざまな国から参加していたのは意外なことでした。

 

ノルディックニッティングシンポジウムではデンマーク、スウェーデン、ノルウェーが中心ですが、クラフトキャンプの参加者は11ヵ国(フィンランド、アメリカ、オーストラリア、スウェーデン、リトアニア、スイス、ドイツ、ノルウェー、オランダ、英国、そして日本)。

 

ネームカードに国旗がついているのですが、なかには「星条旗」と「エストニア」の国旗、また「スイス」と「オランダ」のように国旗が2つの人も見られました。ドイツとアメリカからの参加者には、すでに3回、4回と参加している人も多く、中には毎回参加という人もいるとのことでした。だから国は違ってもすでに気持ちが通い合っている人たちが多く、国を越えて初日からいい雰囲気で始まりました。

 

模様がきれいで編んで楽しい「インレイ」

 

2018年のニッティングシンポジウムのときに驚いたのは、ワークショップに必要な編み針と糸がすべて用意されていたことでした。

 

今回もちょっと大げさに言えば、手ぶらで参加しても作品が作れる環境でした、ですから「木彫りのクラスの道具は?」と聞いたところ「すべて用意されている」との返事でした。

 

最初に参加したインレイのクラスは、以前から知りたかった「インレイ」と「フリンジ」を使ったピンクッションのワークショップで受講者は5名。インレイは、見た目はサテンステッチ?という印象ですが、模様の部分を別糸で編みながら表に渡していくテクニックです。

 

インレイの模様とフリンジがついたハーフミトン

 

先生が見せてくれたサンプルはインレイの模様と、フリンジが付いたハーフミトンでした。フリンジは一応本で習得はしたのですが、その方法でいいのかどうか確認したかったので、その点でもワクワクでした(フリンジについては後編で詳しくご紹介します。)

 

インレイは必要な段で確実に糸が渡るので、きれいな模様ができます。でも実はちょっと「刺繍したらいいのでは?」と思っていて、同じような感想をもらした人がいました。

 

最終日に全員がつくった作品を展示していたときのこと、1人の方が「編んだの?」と聞くので「編んだのよ」というと「刺繍すればいいのに」と。思わず「実は私もそう思う」と答えてしまいましたが、インレイは実際に編んでみると結構楽しいのです。

 

私はとても編み上がらないまま2日目を迎え、その日の作品にとり掛かろうしたら、先生は「完成させることが大事」と。その言葉に「それもそうだ」と思い直し結局2日かけて仕上げましたが、大満足。「完成させることが大事」を肝に銘じました。

 

ワークショップ作品

 

私の隣の席の方は、ドイツからの参加者で、翌朝にはインレイのピンクッション本体が出来上がっていたので、コードの部分を習って早々完成させ、次に編み始めたのは2日目のテキスト風。「昨夜編んだのですか?」と聞くと、「去年の続きです」とのこと。昨年も「インレイ」のワークショップを取った方とわかりました。

 

林ことみさん プロフィール

 

ニット、刺繍、ソーイングなどの分野で活躍する手芸ジャーナリスト。子供のころから物作りが好きで、息子の誕生を機にベビーニットや子ども服を雑誌で発表するようになる。

2000年から、ノルディック・ニッティング・シンポジウムに参加。’15・’17・’19年に続き、’21年も山梨県清里で「ニッティングデイズ」を企画・開催。

ておりやの糸だけを使った作品集『今日は何編む?』や『林ことみのパターンコレクション』(いずれも日本ヴォーグ社刊)をはじめ著書多数。

 

 

ておりや通信『te』vol.86
林ことみのハンドメイドNavi〈拡大版〉より

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