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2018/08/03
「麻」は、春夏のお洋服によく用いられる素材。
だからシャリ感や光沢といった麻の特徴は、広く知られていますね。
でも―。
「チクチクしないならリネンだね」
「ラミーはシワになりやすいけど光沢がきれいね…」
麻の洋服を着ている人にそんな話をすると、キョトンとされること、ありませんか?
そんなとき、「麻の特徴は何となくわかっていても、それ以上のことはあまり意識されてはいないんだな…」と感じます。
今回はそんな、知られざる?麻についてのおはなし。
麻についてよく知っている方も、自信のない方も、ぜひここで「麻って何?!」を確かめてみてください。
Contents
「麻」には次の3通りのような定義があります。
◆その① 広義の「麻」
特定の植物をさすのではなく、茎や葉脈からとれる繊維、つまり「植物の繊維」の総称として「麻」という言葉が使われます。熱帯の植物から寒冷地の樹皮まで、その種類はさまざまで、世界には数十種類にものぼる麻が利用されていると見られます。
◆その② 狭義の「麻」
日本名を「アサ」とする植物もあります。
狭義の「麻」は、その植物や繊維を指し示します。
◆その③ 「麻」と表示される植物繊維
現在日本の繊維製品で「麻」と表示できるのは、亜麻(リネン)または苧麻(ラミー)の2種類。手織り・手編みを趣味にしてきた方には、おなじみの素材ですね。
では3つの麻の定義に沿って、さらに詳しく見ていきましょう。
まずはさまざまな植物繊維を指す、広義の「麻」。
その種類を、茎や幹からとる「靭皮(じんぴ)繊維」と、葉脈からとる「葉脈繊維」に大別してご紹介します。
1.亜麻(あま/リネン)
原料植物:アマ(アマ科)
おもな生産地:フランス・ベルギーなどヨーロッパ
用途:手織り・手編み糸、衣料など
2.苧麻(ちょま/ラミー)
原料植物:カラムシ(イラクサ科)
おもな生産地:中国・フィリピン・インドネシアなどアジア、ブラジル
用途:手織り・手編み糸、衣料など
3.大麻(たいま/ヘンプ)
原料植物:アサ(アサ科 ※旧分類はクワ科)
おもな生産地:ルーマニア・イタリア・中国
用途:衣料、生平(きびら)、ロープ
※「生平」とは、さらしをしていない麻の平織物。甚平など男子の夏物に用いられていました。
4.黄麻(こうま/ジュート)
原料植物:コウマ(アオイ科 ※旧分類はシナノキ科)
おもな生産地:パキスタン・インド・タイなど熱帯アジア
用途:麻袋、カーペット基布
5.洋麻(ようま/ケナフ)
原料植物:ケナフ(アオイ科)
おもな生産地:インド・タイなど熱帯アジア
用途:壁材、パルプ用品
1.サイザル麻
原料植物:サイザルアサ(キジカクシ科)
おもな生産地:フィリピン、ブラジル、ケニアなどアフリカ
用途:ロープ、ひも、ラグ、バッグ
2.マニラ麻
原料植物:マニラアサ(バショウ科)
おもな生産地:フィリピン
用途:ロープ、ひも、帽子、紙(日本の紙幣にも使われています)
※葉鞘が巻きついて茎のように見える部分(偽茎)から繊維をとり出します。
3.芭蕉
原料植物:イトバショウ(バショウ科)
おもな生産地:日本(沖縄県、奄美群島)
用途:芭蕉布
※葉鞘が巻きついて茎のように見える部分(偽茎)から繊維をとり出します。
4.パイナップル麻
原料植物:パイナップル(パイナップル科)
おもな生産地:熱帯アジア、ブラジル
用途:衣類
5.コイヤー
原料植物:ココヤシ(ヤシ科)
おもな生産地:熱帯アジア、アフリカ
用途:マット、ひも、漁網
※ココヤシの実(ココナッツ)の果皮からとり出した繊維です。
以上ご紹介したように、ひと口に「麻」といっても原料植物は多様で、その繊維の特徴によって用途にも違いができるわけです。
もちろん、ここに挙げた用途はほんの一部。
アイデア次第で、いろんな麻素材を使って、いろんな手仕事が楽しめます。
次は、「アサ」という名の植物の繊維について。
それは「大麻」、クラフト素材としては「ヘンプ」の名で呼ばれる繊維です。
ヘンプという素材の大きな特徴は、硬さと強さ。日本でも神社のしめ縄や神具、武士が着用した裃(かみしも)、弓の弦などに用いられてきました。
大麻と聞くと、ドキッとされる方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも繊維利用のための大麻は改良された品種。日本でも許可制のもと「無毒大麻」が栽培されています。
現在、糸や洋服などの繊維製品で「麻」と表示できるのは、亜麻(リネン)と苧麻(ラミー)の2種類のみ。
さらに2017年4月、「家庭用品品質表示法」(消費者庁)が一部改正され、次のような表示もできるようになりました。
改定前=「麻」
改定後=従来の「麻」に加え、「リネン」または「亜麻」の表示も可能
改定前=「麻」
改定後=従来の「麻」に加え、「ラミー」または「苧麻」の表示も可能
なお、リネン・ラミー以外の素材は一律「植物繊維」と表示されてきましたが、この改正によって「植物繊維(〇〇〇麻)」などの表示もOKに。
より詳しい素材情報が得られると、作りたいもののイメージや目的に合った素材が選びやすくなるので、この改正は歓迎したいですね!